家の性能 徹底解説

2020.08.02

本当に必要な4つの「地震対策」|耐震等級だけでは不十分!【地震・災害・シロアリ対策④】

南海トラフの危険性が高まっていますので、新築住宅の地震対策についての正しい知識を身に付けていきましょう。まず、このあたりから。

・現建築基準法で建てた家の地震倒壊数は、意外と少ない
・耐震等級2・3でも、設計士次第で弱い家になることがある
・地震よりも、大きな死亡リスクがある

本当に必要な4つの「地震対策」|耐震等級だけでは不十分!

データから読み解く地震の基本知識

新築住宅の地震対策は、住宅会社の営業ツールとしてうまく使われ、本当に大切な情報が施主に届いていないように感じます。まずは、過去のデータから読み解く「地震の基本知識」を紹介します。

・現建築基準法で建てた新築住宅の地震倒壊数は、意外と少ない
以下、熊本地震の家屋倒壊状況データです。(赤:全壊、オレンジ:大破)1981年と2000年に建築基準法の改正ごとに、被害確率が下がっているのが分かります。2000年以降に建築された家は、7棟が全壊、12棟が大破したということです。

<熊本地震 益城町中心部における木造建築物の建築時期別倒壊状況>
熊本地震 益城町中心部における木造建築物の建築時期別倒壊状況
(出典:国土交通省住宅局

2000年以降の家が倒壊した地震は、熊本地震のみで、東日本大震災では、地震の揺れによる倒壊はなかったとされています。つまり、2000年以降に建築され、直近約20年間で地震によって全壊した家は7棟、全壊・大破した家は19棟ということです。

この数字を多いと見るか少ないと見るか?は人それぞれですが、確率的に見ると、年に1棟以下しか全壊・大破していないので、交通事故(年間3,500人死亡)等のリスクに比べると、比べるまでもなく低い数値と言えます。今後の継続入居に不安が残る軽微・小破・中破(黄色)を入れても、123棟です。

<交通事故死者数の推移>
交通事故死者数の推移
(出典:毎日新聞

・耐震等級2・3でも、設計次第で、弱い家になることがある
耐震性に大きな影響を与えるのに、耐震等級の項目に含まれていない要素があります。それは、「直下率」「偏心率」「シロアリ対策」「気密性能」です。

直下率は、1階と2階の壁や柱の一致率を指します。直下率が低いと、強度・コスパ・気密性などに悪影響がでます。偏心率は、家のバランスを表す数値。家を支える耐力壁の配置バランスが弱いと、地震に弱い家になってしまいます。

また、どれだけ強い設計にしても、シロアリ被害や内部結露によって、構造材が腐ってスカスカになっては意味がありませんよね。阪神淡路大震災で倒壊した家屋の多くが、シロアリ被害に合っていたというデータがあります。

関連記事:新築時の適切な「シロアリ対策」|防蟻剤だけではシロアリ被害を防げない!?
関連記事:「気密性能」を比較する基準と推奨レベル|C値の解説と適正数値

<阪神淡路大震災の家屋倒壊とシロアリ被害の関連性>
阪神淡路大震災では、シロアリ被害のあった家の95%が全半壊
(出典:住まいるコープ

・地震よりも大きな死亡リスクがある
地震による家屋倒壊よりも、圧倒的に確率の高い死亡リスクへの備えが、足りていません。地震対策だけに過度にお金を掛けるのではなく、リスクの高い死亡原因への備え(定期的な健康診断など)にバランスよく費用配分する方が、賢い選択と言えます。

交通事故 年間3,500人以上
ヒートショック 年間15,000人以上
自殺 年間20,000人以上
胃がん 年間30,000人以上
大腸がん 年間48,000人以上

安全性能の高い車を買う、ストレスをためないように趣味に適度にお金を使う、がん検診・ピロリ菌検査は必ず受ける、HPVワクチン接種を受ける、などにお金をかける方が、命を守るという意味では効果的です。

お金のストレスは大きいので、地震対策にお金をかけて、お金のストレスを抱えてしまう…なんてことが絶対ないようにしましょうね。

<自殺者数の推移>

自殺リスクは地震で命を落とすリスクよりはるかに高い
(出典:朝日新聞デジタル

【結論】ちょうどいい塩梅の『地震対策』とは?

ちょうどいい塩梅の「地震対策」は以下の通りです。

①耐震等級 ⇒ 等級2
②計算方法 ⇒ 簡易計算
③直下率 ⇒ 壁直下率50%以上(プラン時)
④偏心率 ⇒ 0.2以下

※ちょうどいい塩梅の「●●」とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という“ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベル。

①耐震等級とは?

建物の構造の強さの目安で、地震に対する倒壊のしにくさを表す指標です。等級1〜3の3段階で示されます。ネットを調べれば情報はたくさんありますので、簡単に説明しておきます。

・等級1
建築基準法に定められた最低基準と同等で、数百年に一度発生する地震でも、倒壊しない強さ。

・等級2
数百年に一度発生する地震の1.25倍の力の地震でも、倒壊しない強さ。

・等級3
数百年に一度発生する地震の1.5倍の力の地震でも、倒壊しない強さ。

<耐震等級1・2・3の違い>
新築住宅の耐震等級の違い
(出典:ABCハウジング

 

「耐震等級2」を推奨する理由

ちょうどいい塩梅の「耐震等級」は、耐震等級2。耐震等級2をなぜ推奨するのかというと、「計算が義務付けられ、外部からのチェックが入る」からです。

耐震等級1では、耐力壁の量の計算も設計士任せですし、水平方向の強度は細かく計算されません。一方、耐震等級2を取得すれば、耐力壁の量はもちろん、基礎や梁などの水平方向の強度計算も義務になります。そして、以下要素すべてにおいて、外部機関のチェックが入るので、設計士の力量によらず強い家を建てることができるわけです。

<耐震等級1と耐震等級2の違い(左:等級1、右:等級2)>

新築住宅の耐震等級1と耐震等級2の違い

(出典:ホームズ君.com

耐震等級3ではなく、「耐震等級2」を推奨する理由

耐震等級3にすると、コストがさらに上がり、間取りの制限が増えるからです。前述の通り、地震で家が倒壊するリスクは低いので、過度にお金を掛けるべきではないと考えています。

繰り返しますが、耐震等級3を取得する事は決して悪いことではありませんので、南海トラフで震度7が想定されている地域等において、予算に応じて耐震等級3取得を検討してみてください。

<南海トラフ大地震による震度予想>
南海トラフ地震の震度予測
(出典:国土交通省関東地方整備局

『ほとんどの専門家が耐震等級3を必須と言っているじゃないか!』に対して

確かにインターネットで見ると、「耐震等級3は必須!」と主張する専門家が多いですね。もちろん、耐震等級3は悪いことではないので、予算と間取りに納得できそうなら、取り組んでください。グッシンは、等級3を否定しているわけではなく、等級3は必須ではないという考えです。

「耐震等級3必須派」の専門家が根拠にしているデータは、以下、熊本地震での耐震等級別倒壊データです。調査対象となった平成12年6月以降の家の総数は319棟です。(等級1:301、等級2:2、等級3:16)

<熊本地震 益城町における耐震等級別の倒壊状況>
熊本地震における耐震等級別の家屋倒壊データ
(出典:国土交通省住宅局

確かに、耐震等級3の家は倒壊していません。しかし、耐震等級3必須の根拠として、このデータを用いるのは不適切です。理由は以下の通り。

・母数が少ない
等級3の棟数が16棟なので、統計的に母数が少なすぎます。

仮にこのうちの1棟が倒壊していた場合、耐震等級3の家の倒壊確率は1/17=5.8%となり、耐震等級1の倒壊率(2.3%)より高くなります。

つまり「耐震等級3の家の方が倒壊しやすい」と言う結論になってしまいます。これは、もちろんあり得ません。分子が1変わっただけで、結論が逆転してしまうほどの少ない母数で、物事を論じるのは不適切と言えるのです。

・倒壊原因の半数が施工不良
耐震等級1の家の倒壊7軒のうち、3棟が施工不良が原因とされています。図面通り施工されないならば、設計図面で認定を受けている耐震等級の意味がなくなってしまいます。

施工不良が原因である倒壊データを、「設計強度」である耐震等級3の有用性に使うのは、不適切です。

<被害要因は、施工不良(現行規定の仕様となっていない接合部)が3棟>

熊本地震における家屋倒壊原因の半数が施工不良
(出典:国土交通省住宅局

・耐震等級2の家が倒壊した記事と矛盾する
ちなみに、耐震等級2の家が倒壊したという記事が出ているのに、上記データには載っていない(倒壊した家7棟すべて耐震等級1とされている)点も少し腑に落ちません。

深く突っ込むことはやめておきますが、「耐震等級制度は有効だ!」と言う結論ありきで、このデータが作られているのでは?と勘ぐってしまいます。

ということで、「耐震等級3は必須なのか?」という問いに対する誠実な答えは、「その答えを出せるデータが、まだ存在していないのでわからない」です。その上で、「耐震等級3を取得すべきかどうか?」というのは、人の数だけ意見があっていいと思っています。

<耐震等級2の家が倒壊したという記事>
熊本地震では耐震等級2でも倒壊していた
(出典:日経ホームビルダー

『耐震等級3取得で地震保険が安くなるから、得じゃないか!』に対して

確かに、長い目で見ればそうかもしれませんが、なんでもかんでも長い目で見て初期費用を多くかけてしまうときりがありません。断熱性能でも同様のことがいえます。そもそも、地震保険は適用率が非常に低いので、建物の地震保険加入は必須ではないと考えています。

<地震保険の割引制度>
地震保険の割引率
(出典:SBI損保

以前は、耐震等級1を推奨してましたよね?

はい。今でも、十分な経験と構造の知見がある設計士であれば、耐震等級1でも問題ないと考えています。

というのも、優秀な設計士であれば、計算をしなくとも「計算すれば耐震等級2を取得できる図面」を作成する事は可能だからです。壁量充足率、基礎、床組み、梁の厚み、耐力壁線間距離などの項目を、自ら検討していけばOK。あえて耐震等級1にする事で、計算費用と申請費用を節約することができます。

ただ、この考えには問題がありました。優秀な設計士を見極めるのがとても難しいという事です。ましてや素人である施主が設計士の力量を見極めるのは無理だと判断しました。ということで、耐震等級2を取得することで、家の強度を担保するのが無難だなと考え、基準を見直した経緯があります。

②簡易計算を推奨する理由

構造の計算方法は、計算なし→簡易計算→許容応力度計算の順に、計算精度が上がっていきますが、グッシンは、簡易計算を推奨します。理由は、命を守る費用対効果を踏まえた、ちょうどいい塩梅の考えによります。

冒頭にも触れた通り、地震による家屋倒壊の死亡リスクは他の死亡原因より圧倒的に低い。命に関わることだからお金をかけるべき!という気持ちもわかりますが、それならば、地震対策ではなく、他の死亡リスクにお金をかけた方が、費用対効果は高いと考えます。

また、仮に許容応力度計算を行い、耐震等級3を取得し、免振装置を付けて…とやっても地震で家が倒壊することはあります。どこまでいっても、生きている以上リスクをゼロにする事は無理なので、リスクヘッジばかりを優先せず、経済とのバランスをとる判断が賢明です。

一方で、構造の計算を設計士任せにしてしまうのは、さすがにリスクが高すぎますので、外部機関のチェックを含めて計算を行うことは必須。やりすぎずやらなさすぎず、まさにちょうどいい塩梅の考えで、構造の計算方法は、簡易計算を推奨します。

当然ながら、予算に余裕がある方が、許容応力度計算を行うのは全く問題ありませんので、検討してみてください。

<許容応力度計算費用の目安>

新築住宅の構造計算費用の目安
(出典:一級建築士事務所 諸富設計

 

③直下率とは?

直下率とは、1階と2階の壁や柱の一致率のことを指します。

直下率は、高ければ高いほど良いとされますが、直下率が高いほど間取りの自由度は失われていきます。直下率100%とは、1階と2階の間取りが全く同じということになりますので、賃貸住宅でもない限り無理ですよね。

なので、間取りの自由度を確保しながらも、意識するだけでクリアできる直下率の目安を理解してもらえればと思います。

家の強度を左右する直下率とは?
(出典:NHK)

先ほど紹介した「熊本地震で耐震等級2の家が倒壊した」という記事ですが、「直下率が低かったことが一つの要因ではないか?」という記載もありました。

もちろん、直下率が低かったことだけが倒壊原因であったわけではありませんが、倒壊の一因になった可能性は十分にあります。ところが、建築基準法に直下率のクリアすべき数値は規定されていないので、自主的に意識しなくてはなりません。

<直下率の低い家が倒壊したという記事>
直下率が低いと耐震性能が落ちる

(出典:日経ホームビルダー

「壁直下率50%以上(プラン時)」を推奨する理由

ちょうどいい塩梅の「直下率」は、壁直下率50%以上(プラン時)です。

直下率の推奨数値に関しては、様々な意見があるので、正解はありませんが、実際に数百件のプランを設計する中で、壁60%以上をクリアしようと思うと、かなりの間取り制限を感じたのが正直なところ。

逆に、壁50%以上であれば、さほど間取りを制限しなくとも、意識するだけでクリアできる数値だと感じます。

次に、なぜプラン時なのか?という点ですが、これは簡単で、間取りが決まってしまえば、家の直下率はほぼ決まるからです。間取りが決まった後に、直下率を向上させようと思っても、限界があります。

なので、3D間取り作成ソフトの直下率確認ツールを活用してください。ちなみに、柱の直下率に関しては、壁の直下率が高ければおのずと高くなりますので、まずは壁の直下率を意識してもらえればOKです。

<3D間取り作成ソフトの直下率確認ツール>
新築住宅の直下率は簡単に確認できる
(出典:安心計画

『直下率の要望は、いつ言えばいいの?』に対して

直下率の要望は、間取りをつくる前に伝えるようにしましょう。間取りの構想段階から意識しないと、「壁直下率50%以上」をクリアすることは難しいからです。

まともなプランナーであれば、直下率のことくらい意識していますので、イラっとされるかもしれませんが、直下率を意識せずに間取りをつくるプランナーが2人に1人はいます。なので、施主自身のリスクヘッジのために、必ず直下率の要望を伝えるようにしましょう。

<直下率を意識しないプランナーはたくさんいる>
新築住宅の多くのプランナーが直下率のことを考えていない

④偏心率とは?

ザックリいうと、家を支える「耐力壁のバランスが適切か?」を確認する指標です。偏心率は、耐震等級のチェック項目に含まれないので、耐震等級を気にするだけではクリアできない項目という事になります。

詳しく言うと、平面図上の中心である「重心」と、耐力壁のバランスの中心を「剛心」が、どれだけ離れているか?という指標です。重心と剛心が離れると、偏心率は高く(地震に弱く)なり、重心と剛心が近づくと、偏心率は低く(地震に強く)なります。

<重心と剛心の距離で偏心率は決まる>

新築住宅の耐力壁のバランス指標「偏心率」とは?
(出典:ホームズ君.com

偏心率は「0.2以下」を推奨する理由

ちょうどいい塩梅の「偏心率」は、0.2以下です。

偏心率は、1階のx方向y方向と2階のx方向y方向でそれぞれ計算するので、2階建なら4つの偏心率全てで、0.2以下をすることを推奨します。

建築基準法では、木造住宅の偏心率は0.3以下と規定されているのですが、これを守るだけでは、耐力壁のバランスが悪くなってしまいます。一方、大きな建物の基準である0.15以下を基準にすると、間取り上の制限がでてきます。

以上を踏まえ、ちょうどいい塩梅の偏心率を0.2以下としつつ、努力目標として0.15以下を目指すのが良いですね。

<偏心率の目安>
新築住宅の耐力壁バランスの指標「偏心率」の目安
(出典:ホームズ君.com

特に注意すべき箇所は、南北の偏心率です。

南はたくさん窓をとり、北はあまり窓をつけませんよね?窓を付けると、その部分に耐力壁をとることはできませんので、南北の耐力壁のバランスは悪くなりがちです。

<南に窓が多いため、南北の『偏心率』は悪く(高く)なりやすい>
新築住宅の南北の偏心率(耐力壁のバランス)は悪くなりやすい

『偏心率のために壁量を減らしても大丈夫?』に対して

確かに、壁量が減ると弱くなるんじゃないか?と思いますよね。それは分かります。

しかし、壁量を特定の場所に増やし過ぎると、地震の揺れが特定の場所に集中してしまうので、耐力壁の量をとりあえず増やせばよいというわけではないってことです。

なので、「耐力壁をとれる場所でできるだけとろう!」と考えるのではなく、全体バランスを見ながら、適切に耐力壁を配置していくバランス感覚を大切にしてください。

<耐力壁の配置はバランスが大切>
新築住宅の地震対策もバランスが大切

『引き戸は地震に弱い?』に対して

引き戸が地震への弱さに直結するとは言い切れませんが、耐力壁を取りにくくなるのはその通りです。

開き戸であれば、耐力壁をとれないのはドアの部分だけで済みますが、引き戸にするとドアを引く部分にも耐力壁を取ることができません。一方、引き戸のメリットはなんといっても、空間を広く利用できることですよね?

<通常の引き戸は、耐力壁が取りにくい>
新築住宅の耐力壁をとれない通常の引き戸
(出典:パナソニック

そこで、地震に強く&空間を広く利用したい!という方は、「アウトセット」の活用を検討してください。壁を確保した上で、引き戸のように空間を広く利用することができます。

アウトセットのデメリットは、壁から扉分の厚みが飛び出してしまうことですが、個人的には大きな支障はないかなと思います。あとは、上部にレールが来るのでデザイン的にどうか、程度でしょうか。

また、アウトセットの場合は、下部レールがなくなるので、レールの隙間にゴミが挟まることがなくなるというメリットもあります。プランナーに「耐力壁の確保が厳しいときは、アウトセットも検討できますよ」と伝えておくと、打ち合わせがスムーズです。

<耐力壁を確保できる「アウトセット」の引き戸>
耐力壁をとれるアウトセットの引き戸
(出典:楽天市場

『絶対に、家の四隅には耐力壁が必要?』に対して

絶対ではありません。

四隅に耐力壁を入れておくと、構造上の数値は確かに良くなります。ただ、四隅に耐力壁入れなくても、①~④がクリアできていれば、大きな問題はありませんので、絶対ではないということです。

家の四隅に耐力壁を確保することは、必須ではなく推奨
(出典:ナルミアドバンス

『広い空間をとりたいなら、鉄骨の方がいいのでは?』に対して

鉄骨には大きく分けて、重量鉄骨と軽量鉄骨がありますが、重量鉄骨であれば、広い空間をとれます。コストupと断熱・気密性能downは避けられませんが、広い空間を最優先するなら、ありです。

一方軽量鉄骨だと、柱のない空間は4~5m程度が限界かと思いますので、木造とさほど大差ありません。重量鉄骨と同様、断熱・気密性能はdownします。

<軽量鉄骨造と重量鉄骨造>
新築住宅の軽量鉄骨は広い空間を作れない。重量鉄骨は広い空間を作れる。
(出典:家仲間コム

『ということは、吹き抜けは地震に弱い?』に対して

吹き抜けが「ある」と「ない」では、当然吹き抜けが「ない」方が強いです。吹き抜け部分には、水平面の強度を上げる床がありませんからね。

しかし、耐震等級2を取得できる設計にすれば、水平面の強度も検討されますので、吹き抜けがあっても問題はありません。

『免震・制震装置は必要ないの?』に対して

結論、設置しなくて良いと思います。免震装置と制震装置とは、地震による建物の揺れを少なくする(と実験で証明されている)装置です。

・免震装置
建物と地面を切り離し、地震の揺れが建物に伝わらないようにする装置です。主に、ビルやマンションなどの高層建築物に採用されます。

・制震装置
建物が受けた振動エネルギーを吸収し、建物の揺れを小さく抑える装置。歴史が浅く、国の認定基準も存在していません。

新築住宅の免震・制震・耐震の違い
(出典:THK

まず、免震装置ですが、歴史も実績もあり、とても良い装置と思います。ですが、価格が高すぎます。最低でも数百万円はします。2~3階建ての戸建て住宅に導入すべき装置ではありません。

免震装置を導入する程の予算があるなら、少し広い土地を購入して平屋を建てましょう。その方が、地震対策としても他のメリット的にも、賢いです。

<本気の免震装置(データ改ざんで問題になりましたが…)>
データ改ざんで話題になってしまった免震装置(主にマンション棟に使われる)
(出典:THK

次に、制震装置ですが、免震装置に比べて、価格は落ちるので導入しやすいと思います。ですが、効果があまりに未知数と感じます。様々な意見がある議論なので、これはあくまで個人的見解です。

なぜかというと、制震装置メーカーが様々な実験をしてその効果を実証していますが、その実験の条件が製品の効果が出やすいように設定されていたり、実際の大地震の揺れを再現できているのか怪しかったり…と、信ぴょう性に欠けるものが多いからです。

ないよりあったほうがいいのかな~とは思いますが、費用をかける優先度は低いかなと。まずは、効果が確実な窓・断熱・気密・換気システムにお金を掛けたほうが、費用対効果は高いと考えています。

関連記事:第1章 「断熱・気密・換気性能」について|記事まとめ

『建物の揺れを少なくする上で、屋根の選び方の注意点は?』に対して

屋根は、軽い方が地震に強くなります。説明するまでもないですが、地面から離れた高い場所に重いものがあれば、建物は不安定になります。主要屋根材の重さを見てみましょう。

<屋根材の重さ比較>
新築住宅の屋根の重さ比較(瓦、スレート、ガルバニウム)
(出典:街の屋根屋さん千葉

瓦は重いので、地震対策の面で考えると不利ですね。ただし、瓦の重さに応じた構造強度にすれば問題はありませんので、ダメというわけではありません。コストが二重にup(瓦のコストと構造強度up)するので、費用対効果を考えると推奨しないという事です。

一方、ガルバリウム鋼板は、瓦の1/10の重さのため、地震対策の面でも優れています

第2章「メンテナンス性能」にて、ちょうどいい塩梅の屋根材を「ガルバリウム鋼板」と規定しているので、ここでは屋根材は取り上げません。

関連記事:「屋根・ルーフィング・バルコニー防水」のメンテナンス費用を安くするコツ|選んではいけない建材とは?

『よく見かける耐震等級●相当って、どういう意味?』に対して

住宅会社の営業戦略でよく使われる表現ですね。耐震等級2・3相当というのは、耐力壁の量のみ耐震等級2・3の基準をクリアした耐震等級1の家を指していると思われます。地震対策は、耐力壁の量だけでは不十分ですので、必ず①~④全てをクリアするようにしてくださいね。

耐震等級●相当はあてにならない

まとめ

ちょうどいい塩梅の「地震対策」は以下の通りです。

①耐震等級 ⇒ 等級2
②計算方法 ⇒ 簡易計算
③直下率 ⇒ 壁直下率50%以上(プラン時)
④偏心率 ⇒ 0.2以下

※ちょうどいい塩梅の「●●」とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という“ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベル。


【文責:瀬山彰】

プロデューサー紹介

master

日本の家づくり 強化ディレクター

瀬山 彰

筑波大学理工学群数学専攻卒(数理統計学士号)。硬式野球部に所属し、首都大学野球リーグの線形回帰分析を行う。中学高校の数学教員免許を取得。

筑波大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードを確立することを目標に掲げる。

2015年、「家づくり せやま学校」を開校。“日本の施主を強くする”を合言葉に、施主の知識向上を目的とした講演活動をスタートさせた。「展示場では絶対教えてくれない話が聞けた!」「こんな楽しい授業は初めて!」など、口コミでせやま学校の評判が広がり、各メディアからも注目が集まっている。

関西を中心に年間100件以上の講演をこなしながら、雑誌コラムの連載やFMラジオ局「FMOH!」にて冠番組のDJを務めるなど、活躍の場を広げている。

中学高校数学教員免許、宅地建物取引士、2級FP技能士。3人娘(双子4歳、2歳)。広島県出身、広島カープファン。

【メディア出演】
◾️FMOH!85.1 毎週火曜19:00〜
「瀬山彰 NEXT STANDARD LIFE」
◾️子育て情報誌 「まみたん」対談連載
「THE PROFESSIONAL」

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