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家の性能 徹底解説

2019.09.05

新築時の正しいシロアリ対策|防蟻剤だけではシロアリ被害を防げない【地震・災害・シロアリ対策②】

シロアリの特性と新築時の正しい対策

シロアリ対策は、「侵入させない」ことが大切なのですが・・・

シロアリ対策の基本は、シロアリを家に「侵入させない」ことです。マスクや手洗いうがいで、風邪ウイルスを体内に侵入させない風邪対策と同じです。シロアリも風邪ウイルスも侵入させなければ、被害に合うことはないので、最も効果的な対策と言えます。

しかし、日本でのシロアリ対策の現状は、樹種選択や防蟻剤を使った、家に侵入したシロアリからの「被害を防ぐ」方法が一般的です。風邪でいえば、風邪薬のようなものです。防蟻剤の定期的なメンテナンスが必要だったり、防蟻剤が届かない木材の切断面からシロアリ被害がでたりしますので、ベストな対策とは言えません。

誤解なきように付け加えておきますが、防蟻剤などの対策は、シロアリが侵入してしまった場合には、もちろん効果がありますので、最優先の「侵入させない」対策を行った上で実施するのは、全く問題ありません。予算に余裕があれば、検討してみてください。

シロアリは床下から侵入してくる

 

シロアリ被害を受ける確率は?

以下、築年数別のシロアリ被害発生率の資料です。

<築年数別シロアリ被害発生率>
築年数別シロアリ被害発生率
(出典:「しろあり 2014.1」公益社団法人日本しろあり対策協会)

A区分は、シロアリ保証が切れている無保証の家です。5年経過時点で、すでに被害が出ていることが分かります。15年経過すると10%を超え、25年経過すると20%に近づくので、適切なシロアリ対策をしないと、5軒に1軒はシロアリ被害を受けてしまうということになります。

B区分は、シロアリ保証期間内の家です。A区分より被害発生率は確実に下がっているので、定期的な薬剤散布によるシロアリ対策に、一定の効果があることが分かります。反面、築10年を経過すると、10%弱の被害が出てしまっているのも事実で、薬剤散布だけに頼るシロアリ対策では、不十分とも言えます。

シロアリ被害を一度受けてしまうと、再度被害を受ける確率が高いため、「被害を受けたら駆除」すればいいのではなく、被害を受けないように「適切に予防」することが大切です。シロアリに強い家になるかどうかは、新築時のシロアリ対策が適切かどうかで決まるので、しっかりと勉強していきましょう。

<シロアリ被害>
シロアリ対策は新築時に適切に行うしかない

 

【結論】ちょうどいい塩梅の『シロアリ対策』は?

ちょうどいい塩梅の「シロアリ対策」は、以下の通りです。

①侵入路対策 → 非ネコチノイド系の防蟻防湿シート(厚み0.18mm以上)

※ちょうどいい塩梅の「●●」とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という”ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベル。

①シロアリ対策に「非ネオニコチノイド系の防蟻防湿シート」を推奨する理由

日本に広く生息するヤマトシロアリとイエシロアリは、光と風に弱い特性を持っているので、地中(家の真下)に巣をつくり、そこから上方向に上がってきます。なので、基礎下に「防蟻防湿シート」を敷き詰め、シロアリの侵入経路をシャットダウンするのが、最も合理的です。

また、侵入経路をシャッタダウンさせるだけではなく、「防蟻防湿シート」に触れたシロアリが、その危険性を巣にいる仲間に知らせることで、巣を移動(撤退)させることができます。これは、仲間への伝達能力が高いというシロアリの特性を利用しています。

また、基礎下に「防蟻防湿シート」を施工することで、シロアリ10年保証を取得することができます。一般的なシロアリ保証は、薬剤散布による5年保証です。

<基礎下に施工する防蟻防湿シート>
新築時にしかできない防蟻防湿シートによるシロアリ対策
(出典:九州テクノ工販)

 

では、防蟻防湿シートなら何でもいいのか?というと、そうではありません。どんな薬剤を使っているのか?がポイントです。

まず、日本で多く使われているのが、「ネオニコチノイド系」薬剤を使った防蟻防湿シートが多いのですが、これはオススメしません。理由は、「ネオニコチノイド系」薬剤の、水に溶ける性質(水溶性)にあります。

薬剤がシートに練り込んであるため、しばらくは安定して効果を発揮するのですが、「ネオニコチノイド系」薬剤の水溶性により、年々成分が地中に溶けだし、効果が少しずつ落ちていってしまうのです。

一方、オススメできる防蟻防湿シートは、「ビフェントリン」という薬剤を使った防蟻防湿シートです。「ビフェントリン」は、水に溶けない(水溶性がない)ので、紫外線が当たらない限り、シートに練り込まれた薬剤が地中に溶けだすことがなく、長期間にわたり効果が持続します。

少しマニアックですが、薬剤の種類で、シロアリ対策の持続効果がずいぶん変わるので、注意しましょう。また、厚みも0.1mmタイプと0.18mmタイプがありますが、0.18mmタイプを選ぶようにしましょう。0.1mmタイプだと、施工時に破れるリスクが高いです。シートが破れてしまっては、当然、効果は期待できません。

<ネオニコチノイド系殺虫剤は”水溶性”があるため、人や環境への悪影響も懸念されている>
ネオニコチノイド系殺虫剤は水に溶けるため、成分が地中に溶けだし、少しずつ効果が落ちる。
(出典:第20回日本臨床環境医学会学術集会特集)

 

樹種選択や防蟻剤による対策では不十分な理由

まず樹種選択ですが、よくあるのが「桧なのでシロアリを寄せ付けない」というPR。確かに、桧はシロアリが嫌う樹種ではありますが、効果は限定的で被害を受けることもありますし、桧を避けて、他の樹種の間柱などが被害を受けることもありますので、樹種選択に頼りすぎるのはNGです。

次に防蟻剤ですが、最も多く使用されている農薬系の防蟻剤は、5年程度で効果がなくなるため、5年ごとのメンテナンス(薬剤散布)が必要です。また、シロアリは木材の表面ではなく、切断面から侵入することがほとんどなので、表面に薬剤を散布しても、効果は限定的と言えます。

<防蟻剤の散布は5年ごとのメンテナンスが必要>
農薬系の防蟻剤は5年ごとのメンテナンスが必要
(出典:ダスキン)

防蟻剤を表面ではなく、圧力をかけて内部まで浸透させる加圧注入という方法があります。表面散布よりは効果がありますが、どうしても木材には切断面がありますので、そこからの侵入まで防ぐことは難しいでしょう。

冒頭でも触れましたが、シロアリ対策で最も大切なのは、「侵入させない」ことです。この対策をした上で、樹種選択や防蟻剤による対策を検討してください。樹種選択や防蟻剤”だけ”で、シロアリ対策を考えるのは危険です。

<シロアリに強いとされる「桧」も、シロアリの被害を受けることがある>
桧はシロアリに強いが、被害を受けないわけではない
(出典:廣瀬産業)

 

入居後に施主が行うべきシロアリ対策

施主が自ら行うべきシロアリ対策も紹介しておきます。

・家の近くに木材などを置かない
まず、木でできたウッドデッキは設置しないこと。シロアリのえさになることはもちろん、光と風除けにもなるため、シロアリにとってはありがたい存在になってしまいます。段ボールもシロアリのえさになるので、危険です。もちろん、木箱などもいけませんよ。

<木でできたウッドデッキは、メンテナンス面でも非推奨>
ウッドデッキは樹脂製をオススメ

・蟻道ができていないか点検
シロアリは光と風に弱いため、基本的には地中から上方向に進みますが、稀に、外部の地表から侵入することがあります。その場合、「蟻道(ぎどう)」という光と風よけのトンネルを作って侵入しますので、蟻道をチェックしておくことで、外部からの侵入を早期に発見することができます。

<蟻道の例>
稀にシロアリが外部から侵入する場合もある
(出典:SHUT)

・床下の換気
シロアリは風に弱いため、空気の流れがあると生きづらくなります。また、床下の換気が不足し、空気が淀むと、シロアリが大好きな腐朽菌(木を腐らせる菌)が発生し、シロアリが寄ってきます。

特に、床下に外気をそのまま流し込む「自然通気方式(床断熱)」を採用し、風通しが悪い場所に家を建てる時は、床下に専用換気扇をつけるなどの対策を推奨します。「自然通気方式(床断熱)」かつ、風通しが悪い場合は、床下も無風となってしまい、シロアリが住みやすい環境になってしまうわけです。

<シロアリ対策に床下の換気は欠かせない>
床下の換気はシロアリ対策の基本

 

「ベタ基礎にすれば、シロアリ被害はなくなるのでは?」に対して

これは間違いです。ベタ基礎でも、シロアリ被害は出ます。以下データをご覧ください。

<基礎構造別シロアリ被害発生率>
基礎構造別シロアリ被害発生率
(出典:「しろあり 2014.1」公益社団法人日本しろあり対策協会)

赤丸の「布基礎+土壌」に比べて、青丸の「布基礎+土間コン」「ベタ基礎」の被害発生率が低いことが分かります。基礎の底面を土間コンクリートで覆うことに、シロアリ対策の一定の効果があることが分かります。(母数の大きな築10~19年で比較)

ただ、被害がなくなるわけではないことも分かります。シロアリは、0.6mm程度の隙間でも侵入してくると言われていますので、ベタ基礎だからと言って、シロアリ被害がなくなるわけではありません。ベタ基礎のシロアリ侵入経路は、基礎の打ち継ぎ部分や配管周りの隙間が多いです。

 

「床断熱と基礎断熱、どちらがシロアリに強い?」に対して

どちらとも言えません。一長一短があります。

まず床断熱。床断熱の場合は、基礎がむき出しなので、室内側からのシロアリ被害に気づきやすいのがメリット。一方、床下が自然通気になるので、風通しが悪い場所に建てると、床下が換気不足になり、シロアリが好きな腐朽菌が発生しやすくなるのがデメリットです。

基礎断熱は、基礎と断熱材の間のシロアリ被害に気づきにくいのがデメリット。一方、床下も家と一緒に換気するので、換気不足になりにくいのがメリットです。断熱の記事で触れましたが、基礎断熱は底冷え対策として有効なので、「適切なシロアリ対策+基礎断熱」を推奨しています。

<左:基礎断熱 右:床断熱>
防蟻防湿シートを適切に施工すれば、基礎断熱でもシロアリ対策は大丈夫
(出典:桧家住宅名古屋)

「防蟻剤を使う場合の選び方は?」に対して

防蟻剤を使う場合は、人体無害かつ基本的にメンテンナスフリーである「ホウ酸系防蟻剤」を推奨します。ただし、ホウ酸系防蟻剤は、水に弱いため、外構などの外部では使用できません。一方で、避けたい防蟻剤は、人体への悪影響が懸念され、5年に1度のメンテナンスが必要な「農薬系防蟻剤」です。

ホウ酸系にも農薬系にも言えることですが、防蟻剤の処理だけでシロアリ被害は防ぐことはできませんので、防蟻剤は「非ネコチノイド系の防蟻防湿シート」を施工した上での、二次対策とお考え下さい。

<ホウ酸系防蟻剤>
ホウ酸系防蟻剤
(出典:エコパウダー)

 

「ベイト工法はどうですか?」に対して

ベイト工法とは、庭に毒エサをしかけておき、巣をまるごと駆除するという「ゴキブリ団子」的な工法です。巣をまるごと駆除するという点で、非常に優れた工法ですが、効果を持続させるのに手間がかかり続けるというのが、デメリットです。

毒エサはシロアリを引き寄せるエサなので、ひとつ巣を駆除しても、また別のシロアリが毒エサに引き寄せられてやってきます。つまり、巣を丸ごと駆除し”続ける”ことが必要だということです。となると、定期的な毒エサの交換も、半永久的に必要なので、少し負担が大きいかなと思います。

<ベイト工法は、メンテナンス費用が結構かかる>
効果は高いがメンテナンスが大変なベイト工法
(出典:ダスキン)

 

「アメリカカンザイシロアリの対策は?」に対して

日本におけるシロアリ被害の大半を占める「ヤマトシロアリ」や「イエシロアリ」は、地下に巣をつくるため、基礎下の防蟻シートで予防することができますが、外来種の「アメリカカンザイシロアリ」は、木材の中に巣をつくり、どこからでも侵入してくるので、厄介です。

対策としては、アメリカカンザイシロアリは特徴的な糞をしますので、その糞の形状を知っておくことです。根本的な予防は難しいので、被害を早く見つけるための知識をつけておきましょう。

アメリカカンザイシロアリの生息地は限られますので、まずは被害確率の高い「ヤマトシロアリ」や「イエシロアリ」の対策を正確に行うことが大切です。

シロアリの生息地域分布図

(出典:SHUT)

 

まとめ:ちょうどいい塩梅の『シロアリ対策』は?

ちょうどいい塩梅の「シロアリ対策」は、以下の通りです。

①侵入路対策 → 非ネオニコチノイド系の防蟻防湿シート(厚み0.18mm以上)

プロデューサー紹介

master

日本の家づくり 強化ディレクター

瀬山 彰

筑波大学理工学群数学専攻卒(数理統計学士号)。硬式野球部に所属し、首都大学野球リーグの線形回帰分析を行う。中学高校の数学教員免許を取得。

筑波大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードを確立することを目標に掲げる。

2015年、「家づくり せやま学校」を開校。“日本の施主を強くする”を合言葉に、施主の知識向上を目的とした講演活動をスタートさせた。「展示場では絶対教えてくれない話が聞けた!」「こんな楽しい授業は初めて!」など、口コミでせやま学校の評判が広がり、各メディアからも注目が集まっている。

関西を中心に年間100件以上の講演をこなしながら、雑誌コラムの連載やFMラジオ局「FMOH!」にて冠番組のDJを務めるなど、活躍の場を広げている。

中学高校数学教員免許、宅地建物取引士、2級FP技能士。3人娘(双子4歳、2歳)。広島県出身、広島カープファン。

【メディア出演】
◾️FMOH!85.1 毎週火曜19:00〜
「瀬山彰 NEXT STANDARD LIFE」
◾️子育て情報誌 「まみたん」対談連載
「THE PROFESSIONAL」

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