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家の性能 徹底解説

2019.11.27

新築時の適切な「シロアリ対策」|防蟻剤だけではシロアリ被害を防げない!?【地震・災害・シロアリ対策②】

新築時のシロアリ対策について、解説していきます。

新築時の適切な「シロアリ対策」|防蟻剤だけではシロアリ被害を防げない!?

日本のシロアリ対策は防蟻剤に頼りすぎ

シロアリ対策で最も大切なのは、シロアリを家に「侵入させない」ことです。マスクや手洗いうがいで、風邪ウイルスを体内に侵入させない風邪対策と同じ。シロアリも風邪ウイルスも侵入させなければ、被害を受けることはないので、最も効果的な対策と言えます。

しかし、日本で一般的になっているシロアリ対策は、樹種選択や防蟻剤などの、家に侵入したシロアリからの「被害を防ぐ」方法ばかり。風邪でいえば、風邪薬のようなものです。

シロアリ対策は、侵入後の被害を防ぐより、なにより侵入させない予防が大切なのですが、なぜか日本のシロアリ対策は予防が抜け落ちています。

誤解なきように付け加えておきますが、防蟻剤などの対策は、シロアリが侵入してしまった場合には、もちろん効果がありますので、最優先の「侵入させない」対策を行った上で実施するのは、全く問題ありません。

<シロアリの侵入路は地中からがほとんど>
シロアリ侵入路はシロアリの特性上決まっている
(出典:三井化学アグロ

シロアリ被害を受ける確率は?

以下、築年数別のシロアリ被害発生率の資料です。

<築年数別シロアリ被害発生率>
築年数別シロアリ被害発生率
(出典:「しろあり 2014.1」公益社団法人日本しろあり対策協会

A区分は、シロアリ保証が切れている無保証の家。5年経過時点で、すでに被害が出ていることが分かります。15年経過すると10%を超え、25年経過すると20%に近づくので、適切なシロアリ対策をしないと、5軒に1軒はシロアリ被害を受けてしまうということになります。

B区分は、シロアリ保証期間内の家。A区分より被害発生率は確実に下がっているので、定期的な薬剤散布によるシロアリ対策に、一定の効果があることが分かります。反面、築10年を経過すると、10%弱の被害が出てしまっているのも事実で、薬剤散布だけに頼るシロアリ対策では、不十分と言えます。

シロアリ被害を一度受けてしまうと、再度被害を受ける確率が高いため、「被害を受けたら駆除」すればいいのではなく、被害を受けないように「適切に予防」することが大切です。

シロアリに強い家になるかどうかは、新築時のシロアリ対策が適切かどうかで決まるので、しっかりと勉強していきましょう。

<シロアリ被害>
シロアリ対策は新築時に適切に行うしかない

【結論】ちょうどいい塩梅の『シロアリ対策』は?

ちょうどいい塩梅の「シロアリ対策」は、以下の通りです。

①シロアリ対策 ⇒ ピレスロイド系の防蟻防湿シート(厚み0.18mm以上)

※ちょうどいい塩梅の「●●」とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という“ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベル。

①「防蟻防湿シート」を推奨する理由

ちょうどいい塩梅の「シロアリ対策」は、ピレスロイド系の防蟻防湿シート(厚み0.18mm以上)です。まず、なぜ防蟻防湿シートを推奨するのか?から解説します。

冒頭でも触れましたが、シロアリ対策の基本は、侵入させないこと。日本に広く生息するヤマトシロアリとイエシロアリは、地中(家の真下)に巣をつくり、そこから上方向に上がってきます。

なので、基礎下に「防蟻防湿シート」を敷き詰め、シロアリの侵入経路をシャットダウンするのが、最も合理的。シンプルな理由です。

<基礎下に施工する防蟻防湿シート>
新築時にしかできない防蟻防湿シートによるシロアリ対策
(出典:九州テクノ工販

「ピレスロイド系」を推奨する理由

では、防蟻防湿シートなら何でもいいのか?というと、そうではありません。薬剤の種類で、シロアリ対策の持続効果がずいぶん変わるので、注意しましょう。

まず、日本で多く使われている「ネオニコチノイド系」薬剤を使った防蟻防湿シートはおすすめしません。理由は、水に溶ける性質(水溶性)にあります。

薬剤がシートに練り込んであるため、しばらくは安定して効果を発揮するのですが、「ネオニコチノイド系」薬剤の水溶性により、年々成分が地中に溶けだし、効果が少しずつ落ちていってしまうのです。

<ネオニコチノイド系殺虫剤は、水溶性があるため、人や環境への悪影響も懸念されている>
ネオニコチノイド系殺虫剤は水に溶けるため、成分が地中に溶けだし、少しずつ効果が落ちる。
(出典:第20回日本臨床環境医学会学術集会特集

一方、オススメできる防蟻防湿シートは、「ピレスロイド系」薬剤を使った防蟻防湿シートです。「ピレスロイド系」薬剤は、水溶性が低いので、紫外線が当たらない限り、シートに練り込まれた薬剤が地中に溶けだすことがなく、長期間にわたり効果が持続します。

また、「ピレスロイド系の防蟻防湿シート」に触れたシロアリが、その危険性を巣にいる仲間に知らせることで、巣を移動(撤退)させることができます。これは、仲間への伝達能力が高いというシロアリの特性を利用しています。

さらに、厚みも0.1mmタイプと0.18mmタイプがありますが、0.18mmタイプを選ぶようにしましょう。0.1mmタイプだと、施工時に破れるリスクが高いです。シートが破れてしまっては、当然、効果は期待できません。

樹種選択や防蟻剤による対策では不十分な理由

まず樹種選択ですが、よくあるのが「桧なのでシロアリを寄せ付けない」というPR。

確かに、桧はシロアリが嫌う樹種ではありますが、効果は限定的で被害を受けることもありますし、桧を避けて、他の樹種の間柱などが被害を受けることもありますので、樹種選択に頼りすぎるのはNGです。

次に防蟻剤ですが、最も多く使用されている農薬系の防蟻剤は、5年程度で効果がなくなるため、5年ごとのメンテナンス(薬剤散布)が必要です。また、シロアリは木材の表面ではなく、切断面から侵入することがほとんどなので、表面に薬剤を散布しても、効果は限定的と言えます。

<防蟻剤の散布は5年ごとのメンテナンスが必要>
農薬系の防蟻剤は5年ごとのメンテナンスが必要
(出典:ダスキン

防蟻剤を表面ではなく、圧力をかけて内部まで浸透させる加圧注入という方法があります。表面散布よりは効果がありますが、どうしても木材には切断面がありますので、そこからの侵入まで防ぐことは難しいでしょう。

冒頭でも触れましたが、シロアリ対策で最も大切なのは、「侵入させない」ことです。侵入路対策をした上で、樹種選択や防蟻剤による対策を検討してください。樹種選択や防蟻剤だけで、シロアリ対策を考えるのは危険です。

<シロアリに強いとされる「桧」も、シロアリの被害を受けることがある>
桧はシロアリに強いが、被害を受けないわけではない
(出典:廣瀬産業

入居後に施主が行うべきシロアリ対策

施主が自ら行うべきシロアリ対策も紹介しておきます。

・家の近くに木材などを置かない
まず、木でできたウッドデッキは設置しないこと。シロアリのえさになることはもちろん、光と風除けにもなるため、シロアリにとってはありがたい存在になってしまいます。段ボールもシロアリのえさになるので、危険です。もちろん、木箱などもいけませんよ。

<木でできたウッドデッキは、メンテナンス面でも非推奨>
ウッドデッキは樹脂製をオススメ

・蟻道ができていないか点検
シロアリは光と風に弱いため、基本的には地中から上方向に進みますが、稀に、外部の地表から侵入することがあります。その場合、「蟻道(ぎどう)」という光と風よけのトンネルを作って侵入しますので、蟻道をチェックしておくことで、外部からの侵入を早期に発見することができます。

<蟻道の例>
稀にシロアリが外部から侵入する場合もある
(出典:SHUT

・床下の換気
シロアリは風に弱いため、空気の流れがあると生きづらくなります。また、床下の換気が不足し、空気が淀むと、シロアリが大好きな腐朽菌(木を腐らせる菌)が発生し、シロアリが寄ってきます。

特に、床下に外気をそのまま流し込む「自然通気方式(床断熱)」を採用し、風通しが悪い場所に家を建てる時は、床下に専用換気扇をつけるなどの対策を推奨します。

<シロアリ対策に床下の換気は欠かせない>
床下の換気はシロアリ対策の基本

『ベタ基礎にすれば、シロアリ被害はなくなるのでは?』に対して

これは間違いです。ベタ基礎でも、シロアリ被害は出ます。以下データをご覧ください。

<基礎構造別シロアリ被害発生率>
基礎構造別シロアリ被害発生率
(出典:「しろあり 2014.1」公益社団法人日本しろあり対策協会 ※一部加工)

赤丸の「布基礎+土壌」に比べて、青丸の「布基礎+土間コン」「ベタ基礎」の被害発生率が低いことが分かります。基礎の底面を土間コンクリートで覆うことに、シロアリ対策の一定の効果があることが分かります。(母数の大きな築10~19年で比較)

ただ、被害がなくなるわけではないことも分かります。シロアリは、0.6mm程度の隙間でも侵入してくると言われていますので、ベタ基礎だからと言って、シロアリ被害がなくなるわけではありません。

ベタ基礎のシロアリ侵入経路は、基礎の打ち継ぎ部分や配管周りの隙間が多いです。

関連記事:「地盤保証・地盤改良工事・基礎工事」は、どこまでやればいいのか?|地盤改良費用を抑える方法

『床断熱と基礎断熱、どちらがシロアリに強い?』に対して

どちらとも言えません。一長一短があります。

まず床断熱。床断熱の場合は、基礎がむき出しなので、室内側からのシロアリ被害に気づきやすいのがメリット。一方、床下が自然通気になるので、風通しが悪い場所に建てると、床下が換気不足になり、シロアリが好きな腐朽菌が発生しやすくなるのがデメリットです。

基礎断熱は、基礎と断熱材の間のシロアリ被害に気づきにくいのがデメリット。一方、床下も家と一緒に換気するので、換気不足になりにくいのがメリットです。

断熱の記事で触れましたが、基礎断熱は底冷え対策として有効なので、「適切なシロアリ対策+基礎断熱」を推奨しています。

関連記事:「断熱性能」を比較する基準と推奨レベル|UA値の解説と適正数値

<左:基礎断熱 右:床断熱>
防蟻防湿シートを適切に施工すれば、基礎断熱でもシロアリ対策は大丈夫
(出典:桧家住宅名古屋

『防蟻剤を使う場合の選び方は?』に対して

防蟻剤を使う場合は、人体無害かつ基本的にメンテナンスフリーである「ホウ酸系防蟻剤」を推奨します。

ただし、ホウ酸系防蟻剤は水に弱いため、外構などの外部では使用できません。一方で、避けたい防蟻剤は、人体への悪影響が懸念され、5年に1度のメンテナンスが必要な「農薬系防蟻剤」です。

ホウ酸系にも農薬系にも言えることですが、防蟻剤の処理だけでシロアリ被害は防ぐことはできませんので、防蟻剤は「ピレスロイド系の防蟻防湿シート」を施工した上での、二次対策とお考え下さい。

<人体無害で基本的にメンテナンスフリーのホウ酸系防蟻剤>
ホウ酸系防蟻剤
(出典:エコパウダー

『ベイト工法はどうですか?』に対して

ベイト工法とは、庭に毒エサをしかけておき、巣をまるごと駆除するという「ゴキブリ団子」的な工法です。巣をまるごと駆除するという点で、非常に優れた工法ですが、効果を持続させるのに手間がかかるというのが、デメリットです。

毒エサはシロアリを引き寄せるエサなので、ひとつ巣を駆除しても、また別のシロアリが毒エサに引き寄せられてやってきます。つまり、巣を丸ごと駆除し”続ける”ことが必要だということです。

となると、定期的な毒エサの交換も、半永久的に必要なので、少し負担が大きいかなと思います。

<ベイト工法は、メンテナンス費用が結構かかる>
効果は高いがメンテナンスが大変なベイト工法
(出典:ダスキン

『アメリカカンザイシロアリの対策は?』に対して

日本におけるシロアリ被害の大半を占める「ヤマトシロアリ」や「イエシロアリ」は、地下に巣をつくるため、基礎下の防蟻シートで予防することができますが、外来種の「アメリカカンザイシロアリ」は、木材の中に巣をつくり、どこからでも侵入してくるので、厄介です。

対策としては、アメリカカンザイシロアリは特徴的な糞をしますので、その糞の形状を知っておくことです。根本的な予防は難しいので、被害を早く見つけるための知識をつけておきましょう。

アメリカカンザイシロアリの生息地は限られますので、まずは被害確率の高い「ヤマトシロアリ」や「イエシロアリ」の対策を正確に行うことが大切です。

シロアリの生息地域分布図
(出典:SHUT

『シロアリ保証は必要ですか?』に対して

結論、保証してもらって損はないですが、適切なシロアリ対策をしたかどうか?の方が重要です。シロアリ保証は、大きく3種類。

まず、薬剤散布による5年保証。最も一般的な保証で、5年ごとの薬剤散布を行う必要があります。

次に、シロアリ業者や住宅会社が行う10年保証。本来、薬剤散布での保証は5年が上限ですが、営業戦略上、少し無理をして10年保証をしているケースです。シロアリ被害は、10年経過後あたりから増えてくるので、そもそも最初の10年は被害に合う可能性は低いです。

最後に、保険会社によるシロアリ10年保証です。特定のピレスロイド系防蟻防湿シートを施工することで保証を受けられます。この保証がベストではありますが、保証がどうか?よりも適切なシロアリ対策を行うことが何より重要です。

関連記事:「保証・工事・アフターサービス」の標準仕様チェックポイント|推奨グレード紹介

まとめ

ちょうどいい塩梅の「シロアリ対策」は、以下の通りです。

①シロアリ対策 ⇒ ピレスロイド系の防蟻防湿シート(厚み0.18mm以上)

※ちょうどいい塩梅の「●●」とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という“ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベル。


【文責:瀬山彰】

プロデューサー紹介

master

日本の家づくり 強化ディレクター

瀬山 彰

筑波大学理工学群数学専攻卒(数理統計学士号)。硬式野球部に所属し、首都大学野球リーグの線形回帰分析を行う。中学高校の数学教員免許を取得。

筑波大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードを確立することを目標に掲げる。

2015年、「家づくり せやま学校」を開校。“日本の施主を強くする”を合言葉に、施主の知識向上を目的とした講演活動をスタートさせた。「展示場では絶対教えてくれない話が聞けた!」「こんな楽しい授業は初めて!」など、口コミでせやま学校の評判が広がり、各メディアからも注目が集まっている。

関西を中心に年間100件以上の講演をこなしながら、雑誌コラムの連載やFMラジオ局「FMOH!」にて冠番組のDJを務めるなど、活躍の場を広げている。

中学高校数学教員免許、宅地建物取引士、2級FP技能士。3人娘(双子4歳、2歳)。広島県出身、広島カープファン。

【メディア出演】
◾️FMOH!85.1 毎週火曜19:00〜
「瀬山彰 NEXT STANDARD LIFE」
◾️子育て情報誌 「まみたん」対談連載
「THE PROFESSIONAL」

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