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家の性能 徹底解説

2019.11.20

「換気システム」の正しい知識と失敗しない選び方(前半)|第●種換気・熱交換・給気フィルターの推奨レベル【断熱・気密・換気性能④-2】

換気システムの選び方について、解説していきます。

「換気システム」の正しい知識と失敗しない選び方(前半)|第●種換気・熱交換・給気フィルターの推奨レベル

換気システムに関する知識を持っていない住宅会社

前の記事で、換気システム選びの重要性はご理解いただいたと思いますが、問題なのは、この換気システムの重要性をほとんどの住宅会社が理解していないという点です。

換気システムの最も重要なポイントは、当然ながら、適切に換気し“続ける”ことなのですが、メンテナンスについての十分な知識を持っておらず、10年後20年後にも適切に換気し“続けられる”システムなのか?という点に、無頓着な住宅会社が多いのが現状です。

10年後20年後に換気が止まってしまったら、高気密高断熱住宅はどうなるか?詳しくは前記事を見てほしいのですが、臭くて、酸欠で、ハウスダストまみれの不健康住宅になります

関連記事:「換気システム」選びに失敗すると室内の空気環境が悪化する理由|高気密高断熱住宅のデメリット

<換気が不足すると、高気密高断熱住宅は「不健康住宅」になる>
換気システムの選び方を間違えると室内の空気環境が悪化する

義務化された24時間換気システム

「24時間換気システムなんて、私には関係ない・・・」という方も時々いますが、24時間換気システムの設置は義務なので、これから建てる全ての家に何らかの24時間換気システムが導入されることになります。これから家を建てる人全員の問題ということですね。

換気システム選びに失敗すると、臭くて、酸欠で息苦しく、ハウスダストまみれの家に家族を住まわせることになります。こんなことにならないように、施主の自己責任で適切な換気システムを選べるように勉強していきましょう。

<24時間換気システムは平成15年に義務化された>

24時間換気システムは義務化されている
(出典:国土交通省

 

【結論】ちょうどいい塩梅の『換気システム』は?

ちょうどいい塩梅の「換気システム」は、以下の通りです。

①第●種換気 ⇒ 第一種換気
②熱交換システム ⇒ 全熱交換80%
③給気フィルター性能 ⇒ PM2.5対応
④故障時の修理費用 ⇒ 10万円以下
⑤-1給気フィルター位置 ⇒ 家の外から掃除できる位置
⑤-2 排気フィルター位置 ⇒ 掃除しやすい手の届く位置
⑥ダクト設計 ⇒ ダクトは排気経路のみ

※ちょうどいい塩梅の「●●」とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という“ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベルのことです。

①第●種換気とは?換気システムの基本解説

換気システムは、第一種換気、第二種換気、第三種換気の3種類あります。それぞれの換気システムは、給気と排気に機械がついているか?で分類されています。詳細は、他サイトで詳しく解説されていますので、調べてみてください。

<換気システムの種類>
24時間換気システムの種類(第1種換気・第2種換気・第3種換気)
(出典:LIFULL HOME’S PRESS

第一種換気 → 給気・排気ともに機械
第二種換気 → 給気のみ機械(排気は自然)※ 
第三種換気 → 排気のみ機械(給気は自然)

※第二種換気は住宅ではほとんど採用されないので、ここからは、第一種換気と第三種換気について、解説していきます。

第三種換気ではなく、第一種換気を推奨する理由

ちょうどいい塩梅の「第●種換気」は、第一種換気です。第三種換気をおすすめしない理由は、以下の通り。

まず、第三種換気では、熱交換システムを使うことができず、換気により外から冷たい空気がそのまま入ってくることになります。寒い冬に、窓を開けている状態に近いということです。

例えば、以下のような第三種換気は、窓の上部に給気口があり、ここから外部の空気を取り込みますが、これでは、どれだけ家を高気密高断熱にしたところで、外から冷たい空気が入ってしまいます。

第三種換気だと、どうしても「寒いので換気を止めよう!」という気持ちになってしまい、室内の空気環境が悪化するパターンに陥ります。

<第三種換気の給気口:すきま風を入れるイメージ・・・>
第三種換気の給気口は寒い空気が入ってくる
(出典:楽天市場

次に、第三種換気だと、外部の空気を室内に取り込むときに、給気フィルターを設置しにくくなります。給気フィルターがないと、花粉やPM2.5などの汚染物質をそのまま室内に取り込んでしまうことになります。

で、「花粉が入ってくるの嫌なので、換気システムを止めてしまおう!」となって、これまた室内の空気環境が悪化するパターンに陥ります。このように、熱交換と給気フィルターが機能しない第三種換気は、換気システムの運転自体を止めてしまうリスクが高いと言えるのです。

<第三種換気だと、花粉が室内に入ってくる>

さらに付け加えると、第三種換気だと、室内の気圧が下がり(負圧)、外壁からの雨漏りの原因になります。また、排気口の数も限られるので、排気口が設置されていない部屋が、適切に換気されない状態になりやすいと言えます。

<第三種換気の排気口>
第三種換気の排気口
(出典:LIFULL HOME’S

このように、第三種換気には問題点が多いため、第一種換気をおすすめします。日本の家の8割以上に第三種換気が採用されているのは、価格が安い事と、換気の重要性が認知されていないことが要因と思われます。

余談ですが、ほぼ全てのマンションが第三種換気。芸能人が住むような高級マンションも、第三種換気です。RCマンションは気密性高がく、換気不足のリスクが高いので、マンションにも設置できる第一種換気を検討してみるのもありです。

<マンションに多い第三種換気の給気口:閉じてるな…閉じたらだめです>
換気不足リスクが高い第三種換気の給気口
(出典:マイナビ賃貸

 

『でも、第一種換気はメンテナンスが大変なんでしょ?』に対して

おそらく第三種換気を採用している住宅会社の営業トークとして、「第一種換気はメンテナンスが大変なので、やめたほうがいい」という意見があります。この意見は、半分正解で、半分不正解です。

メンテナンス性を考慮していない第一種換気は、確かにだめです。メンテナンスが大変です。大変というか、メンテナンスせず放置になってしまうことが多いので、室内が換気不良になってしまい、住環境が悪化します。と言う意味では、正解です。

反面、メンテナンス性に配慮した第一種換気であれば、問題ありません。というより、室内の空気環境を整えるには、メンテナンス性に配慮した第一種換気以外に選択肢はありません。メンテナンス性については、次の記事で詳しく解説します。

関連記事:「換気システム」の正しい知識と失敗しない選び方(後半)|機械・フィルター・ダクトのメンテナンス性能の見極め方

ちなみに、第三種換気も適切にメンテナンスしないと換気不良に陥ります。最も多いパターンが、換気扇フィルターの目詰まりです。お風呂・トイレ・レンジフードのフィルターが目詰まりしてしまうと、換気不良となってしまいますからね。

第一種換気だろうと第三種換気だろうと、メンテナンスはちゃんとしましょうね!ってことです。

<フィルターの目詰まりが、換気不足の主原因>
【メンテナンス不足による換気不良の原因】換気扇のフィルターにたまったほこり

 

②熱交換システムとは?

換気とはつまり、窓を開けることですから、夏でも冬でも、きちんと2時間に1回窓を開けて空気を入れ替えれば問題はありません。でも実際は難しいですよね?夏は暑いし、冬は寒い。窓を開けて寝ようものなら、冬なら寒すぎて風邪をひきます。

そこで、「換気はしたいけど寒い空気はいれたくない」という要望に応えるのが、熱交換システムです。窓を開けても寒い空気は入ってこないのに、ちゃんと換気はできている、という少し魔法のような優れた機能なのです。イメージ図はこんな感じ。

<熱交換システムのイメージ>
24時間換気システムの熱交換システムの仕組み
(出典:イシンホーム大阪

外から入ってくる冷たい空気が、室内から捨てる暖かい空気の熱を利用して暖めてられ、室内に取り込まれている様子が分かります。外部へ捨てる空気の熱を再利用するシステムと思ってもらえればOKです。

例えば、外は0℃、中は20℃とします。第一種換気で熱交換80%とすると、外から入ってくる0℃の空気を16℃まで温めて室内に給気することができます。室内20℃の空気の熱80%を0℃の空気に熱交換するので、0℃→16℃になるわけです。

これなら、エアコンは16℃→20℃に上げるだけでいいので、しっかりと換気をしても光熱費は高くなりません。

一方、熱交換システム無し(窓を開けたり、第三種換気の場合)だと、0℃の空気がそのまま入ってきます。すると、エアコンは常に0℃→20℃に上げなければいけませんので、光熱費がぐんと上がってしまうわけです。

<熱交換システムによる温度変化イメージ>
熱交換システムのイメージ
(出典:ダイキン工業

熱交換システムは「全熱交換80%」を推奨する理由

ちょうどいい塩梅の「熱交換システム」は、全熱交換80%です。まず、「全熱」交換である理由から解説します。
 
熱には、顕熱と潜熱と2種類があります。詳細の説明は割愛しますが、ざっくりいうと顕熱が温度、潜熱が湿度と考えてもらってOKです。潜熱の一番身近な例は、汗です。
 
水分が蒸発するときに熱を奪っていくという性質を利用し、汗を蒸発させることで身体の温度を下げています。あとはアルコールを塗ったときにスーッとしたり、雨に濡れて放っておくと風邪をひくなどの現象は、潜熱によるものですね。
 
<潜熱のイメージ>

潜熱のイメージ
(出典:トレイン・ジャパン ※一部加工)

顕熱(温度)交換だけを行うのが、「顕熱」交換システム。一方、顕熱(温度)と潜熱(湿度)の両方を交換するのが、「全熱」交換システムです。顕熱交換だけではなく、潜熱交換があるメリットは、こんな感じ。

夏は、エアコンによって湿度が下がるので、室内の湿度は外気の湿度より低くなります。潜熱交換がないと、取り込む外気によって、室内の湿度が上がってしまいますが、潜熱(湿度)交換があれば、取り込む外気をある程度「除湿」した上で、室内に取り込むことができます。

冬は逆。冬は人間が発する水蒸気や加湿によって、室内の湿度が上がります。潜熱交換がないと、取り込む外気によって、室内の湿度が下がってしまいますが、潜熱(湿度)交換があれば、取り込む外気をある程度「加湿」した上で、室内に取り込むことができます。

以上が、顕熱だけではなく潜熱も交換する「全熱交換」をおすすめする理由です。

快適な住環境のために湿度の管理は必要不可欠

次に、「80%」である理由ですが、これは“ちょうどいい塩梅主義”の考えに基づきます。

熱交換率90%の最上位クラスもありますが、換気による熱損失は季節平均で以前全体の10%程度。その10%の差なので、10%×10%=1%程度の差。熱交換の%(パーセンテージ)は、家全体の熱損失で考えると大きくないので、さほどこだわらなくてもいいかな、という結論です。

“ちょうどいい塩梅主義”とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という考え。ある程度高いレベルを維持しつつ、やりすぎないことで費用を極力抑える、究極の最適バランス主義。

 

 

『複雑なシステムを導入すると壊れるのでは?電気代もかかるのでは?』に対して

熱交換システムは、かなりシンプルな構造です。いわば、段ボールのような機構が何層にも重なっているだけです。こんな感じ。

熱交換システムの構造
(出典:レンゴーHP

熱交換の仕組み自体は、エアコンなどで昔から使われている技術なので、決して複雑で新しい機構ではありません。また、電気代も改良が進み、最近では月500円前後まで下がってきています

③給気フィルターとは?

新鮮な空気を取り込む給気口に設置するフィルターのことで、「家のマスク」のような役割を果たします。

<「家のマスク」の役割を果たす給気フィルター>
家のマスクの役割を果たす給気フィルター
(出典:マーベックス

給気フィルターは、除去できる汚染物質によって、花粉対応→PM2.5対応→PM0.3対応・・・という感じに性能が上がっていきます。また、除去率によって、花粉80%カット→花粉90%カット→花粉99%カットという感じに性能が上がっていきます。

で、「結局どこまでやるべきか?」という話ですが、除去率(%)よりも除去できる汚染物質に注目して選ぶことをおススメします。

<日本列島にも、PM2.5は多く飛来している>
肺疾患の原因となる身体を蝕むPM2.5で汚れる都市

給気フィルターは、「PM2.5対応」にすべき理由

ちょうどいい塩梅の「給気フィルター」は、PM2.5対応です。理由は、以下の通り。
 
結論から言うと、PM2.5は、目に見えない大きな脅威だからです。PM2.5は、サイレントキラーとも呼ばれます。
 
PM2.5はとっても小さい粒子なので、身体の防御反応が作動せず、肺の奥深くまで入り込みます。防御反応とは、くしゃみや鼻水のこと。花粉症はしんどいですが、身体が異物を体外に排出しようとしているから、まだましという事です。
 
肺の奥深くに到達したPM2.5は、時間をかけて肺を侵食し、呼吸が苦しくなっていきます。この病気の名前をCOPD(慢性閉塞性肺疾患)といいます。COPDによる2017年の死者数は18,000人ほどで、特に男性の死亡原因の第8位にまで増えています。

<西日本が上位を独占しているのは、中国大陸からのPM2.5飛来が要因かも!?>
COPDによる死亡率(西日本が上位なのは、PM2.5の影響か?)
(出典:鹿児島県

COPDは別名たばこ病と呼ばれ、以前は喫煙者の病気と思われていましたが、受動喫煙やPM2.5の影響により、非喫煙者にも広がりを見せています。言い換えると、PM2.5が滞留する室内は、たばこの煙が漂う室内で暮らすという状態に近いので、PM2.5を除去することは必要だというわけです。

これは当然ですが、喫煙者の方は、こどもたちのために禁煙するか、副流煙を子供たちが吸わないように十分留意してください

 
副流煙には、主流煙より圧倒的に多くの有害物質が含まれています。以下データを見る限り、本来なら、未成年の喫煙を禁止するなら、受動喫煙も禁止しないとおかしいはずです。

<副流煙は、主流煙より圧倒的に有害>
副流煙の有害性/受動喫煙は危険
(出典:日本生活習慣病予防協会

 

『給気フィルターの掃除が面倒なのでは?』に対して

確かに。フィルターがありますというと、「掃除が面倒では?」という声は必ず挙がってきます。でも、よく考えてみてください。

外部の空気の汚染物質(花粉、ほこり、排気ガス、PM2.5など)をそのまま室内に取り込んで、室内が汚れて一生懸命掃除するのがいいのか、給気フィルターで汚染物質を除去して、室内はきれいだけどフィルターの掃除をするのがいいのか。

どちらがいいですか?確実に後者です。汚染物質は室内に入る前にまとめて除去して、汚れたフィルターを掃除するだけのほうが絶対に楽です。というか、フィルターで汚染物質を除去して室内に空気を取り込んだ方が、確実に身体に良いです。

<汚れた(汚染物質を除去してくれた)給気フィルター>
花粉やPM2.5を除去して汚れたフィルター
(出典:ユニックス

 

まとめ

ちょうどいい塩梅の「換気システム」は、以下の通りです。

①第●種換気 ⇒ 第一種換気
②熱交換システム ⇒ 全熱交換80%
③給気フィルター性能 ⇒ PM2.5対応
④故障時の修理費用 ⇒ 10万円以下
⑤-1給気フィルター位置 ⇒ 家の外から掃除できる位置
⑤-2 排気フィルター位置 ⇒ 掃除しやすい手の届く位置
⑥ダクト設計 ⇒ ダクトは排気経路のみ

※ちょうどいい塩梅の「●●」とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という“ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベルのことです。


【文責:瀬山彰】

プロデューサー紹介

master

日本の家づくり 強化ディレクター

瀬山 彰

筑波大学理工学群数学専攻卒(数理統計学士号)。硬式野球部に所属し、首都大学野球リーグの線形回帰分析を行う。中学高校の数学教員免許を取得。

筑波大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードを確立することを目標に掲げる。

2015年、「家づくり せやま学校」を開校。“日本の施主を強くする”を合言葉に、施主の知識向上を目的とした講演活動をスタートさせた。「展示場では絶対教えてくれない話が聞けた!」「こんな楽しい授業は初めて!」など、口コミでせやま学校の評判が広がり、各メディアからも注目が集まっている。

関西を中心に年間100件以上の講演をこなしながら、雑誌コラムの連載やFMラジオ局「FMOH!」にて冠番組のDJを務めるなど、活躍の場を広げている。

中学高校数学教員免許、宅地建物取引士、2級FP技能士。3人娘(双子4歳、2歳)。広島県出身、広島カープファン。

【メディア出演】
◾️FMOH!85.1 毎週火曜19:00〜
「瀬山彰 NEXT STANDARD LIFE」
◾️子育て情報誌 「まみたん」対談連載
「THE PROFESSIONAL」

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