家の性能 徹底解説

2019.11.19

「気密性能」を比較する基準と推奨レベル|C値の解説と適正数値【断熱・気密・換気性能③ 】

断熱性能とセットで考えるべき気密性能について、解説していきます。

気密性能を比較する基準と推奨レベル|C値の解説と適正数値

断熱だけでは片手落ち

高気密高断熱住宅という言葉はもう一般的になりましたが、断熱性能が良くても、気密性能が低いと様々な問題が発生します。まずは、なぜ気密性能が大切か?を解説します。

気密性能が低いと、まず断熱性能が落ちます。どれだけ上等なダウンジャケットでも、前のファスナー全開では寒いのと同じです。

次に、気密性能が低いと壁内結露の原因になります。気密性能が低いということは、隙間が多いということ。隙間が多いということは、その隙間から空気が漏れ(漏気)、漏気によって壁内が冷やされ、壁内に結露が発生してしまうのです。

また、気密性能が低いと、その隙間から水が入り込み、雨漏りの原因にもなります。隙間が多いと空気だけでなく、水も入りやすくなるわけです。

最後にもう一つ。気密性能が低いと、換気が適切に行われません。家が隙間だらけでは、その隙間から空気が漏れて。計算通りに換気されないことは、なんとなくご理解いただけると思います。

関連記事:換気システム選びに失敗すると室内の空気環境が悪化する理由|24時間換気システムの重要性

注文住宅の「隙間」は致命的な欠陥となる

C値とは?

気密性能を測る指標が、C値です。詳しい説明は、たくさん情報が出ているので割愛しますが、ざっくりいうと、家の面積に対して、どれくらいの隙間があるのか?という数値です。

例えば、100㎡の家のC値が2.0の場合。家全体の隙間面積は、200㎠。およそ、14㎝×14㎝の正方形ほどの隙間が空いているということになります。このC値が低ければ低いほど気密性能が高く、C値が高ければ高いほど気密性能は低いということですね。

C値を出すためには、「気密測定」という現場での検査を行う必要がありますが、日本の家10棟のうち1棟も実施されていないと言われています。高気密高断熱住宅!とPRするのに、気密測定を実施しない(C値を出さない)のは、詐欺に近いと感じます。

<気密測定の様子>
気密性能を測定する気密測定(C値測定)

【結論】ちょうどいい塩梅の『気密性能(C値)』は?

ちょうどいい塩梅の「気密性能(C値)」は、以下の通りです。

C値 ⇒ 0.7以下

余裕があれば、さらに低いC値を目指してもらえればと思いますが、こだわりすぎに注意してください。

※ちょうどいい塩梅の「●●」とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という“ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベル。

気密性能は「C値0.7以下」を推奨する理由

ちょうどいい塩梅の「気密性能」は、C値0.7以下です。

気密性能も断熱性能と同じで、「どこまでやるか?」という問題です。C値は低ければ低いほど良いのですが、お金を掛け過ぎてもいけません。そこで、以下3つの条件を踏まえ、ちょうどいい塩梅の数値を設定しています。

・気密性能が担保できる
・正確な施工が担保できる
・さほどお金をかけなくても達成できる

木造住宅で気密住宅の施工に慣れている会社であれば、C値0.7以下は普通に出せます。さほどハードルの高い数字ではありません。(ただし、複雑な形状の家や3階建ての家は、数値が悪くなる傾向があるので、その場合は住宅会社と相談しながら進めてください。)

以下C値は「内断熱のみ(ウレタン吹付)+気密テープ無」の一般的な断熱工法の家の気密数値です。付加断熱(内断熱+外断熱)や気密テープの施工などしなくても、C値0.7以下は余裕でクリアできることを証明してくれています。

<一般的な断熱工法の家の気密数値(C値0.2)>
気密測定結果

もちろん、もっと低い数値を目指してもらってもOKですが、気密性能ばかりがんばるのではなく、窓・断熱・気密・換気システムの4要素の「ちょうどいい塩梅の●●」をもれなくクリアすることを、まずは意識してくださいね。

関連記事:窓の種類と失敗しない選び方|サッシ・窓ガラス・スペーサーの推奨レベル
関連記事:断熱性能を比較する基準と推奨レベル|UA値の解説と適正数値

 

気密性能にこだわる最大のメリット

気密性能にこだわるメリットは、断熱性能向上や内部結露対策の面もありますが、最も大きなメリットは、正確な施工が担保されるという点です。施工が雑だと気密性能は出ません。

そのことは職人が一番よく分かっていますので、気密測定を行う現場は、気密測定を行わない現場より緊張感が増すのです。職人も人間ですからね。

また、注文住宅会社のカタログに書いてあるC値はあまり意味がありません。C値は、間取りや施工の質で1棟1棟変わるからです。大切なのはカタログのC値ではなく、あなたの家のC値ですよね?

必ず気密測定を行い、あなたの家のC値を測定するようにしてください。

<気密測定の風景>
気密測定器の設置風景

『大手ハウスメーカーの多くがC値に言及してませんよね?』に対して

住宅業界の闇に触れる質問ですね、お答えしましょう。

これは、おっしゃる通りです。大手ハウスメーカーの多くが、C値に言及しません。断熱性にも、結露対策にも、雨漏り対策にも、大きな影響を与える気密性能(C値)なのに、なぜ言及しないのでしょうか?

まず、大手ハウスメーカーが扱う鉄骨住宅は気密性能が低い性質があるということです。

そもそも鉄骨住宅の性質上、C値は良くて2.0程度。ちょうどいい塩梅の「気密性能」のC値0.7以下に遠く及びません。大手ハウスメーカーの苦手分野なので、あまり大々的に取り上げられていないといえます。

次に、気密性能は、工事現場で1棟1棟実際に測定しなくてはならないので、手間なんですね。手間とか言ってる場合じゃないくらい、気密性能は大切なんですけどね。

さらに、どれだけ良い断熱材や窓を使っていても、正確な施工がなされないと気密性能が出ないということがあります。図面上ではなく現場で測定するので、正確な施行に自信がない会社は測定したくないわけです。

関連記事:ハウスメーカー・工務店・分譲ビルダー・設計事務所のメリット・デメリット

<隙間なく丁寧に施工された屋根断熱>
職人が丁寧に施工しないと気密性能は担保されない

『そんなに大事な数値なら、国の基準に入っているのでは?』に対して

話は少し脱線しますが、次世代省エネ基準、ZEH基準、HEAT20基準など家の性能を示す基準がたくさんありますが、全てにおいてC値は必要項目に入っていません。断熱、日射、太陽光、冷暖房設備・・・とあるのに、気密の文字はどこにもない。

<住宅の省エネルギー基準に「気密性能」の項目がない…>

ZEH基準を満たすために必要な項目に気密数値が入っていない不思議
(出典:建築省エネ機構

実に不思議ですよね?各社、高気密高断熱住宅とPRしておきながら、C値の基準がない。個人的な推測ですが、大手ハウスメーカーへの配慮ではないでしょうか。

また、省エネ基準においては、H11基準ではC値は項目に含まれていたのに、H25基準では削除されるという、魔訶不思議な現象が起きました。C値は重要ではない!という専門家は皆無なのに、省エネ基準からは削除されるというこの業界の闇です。

H11の基準も、C値5.0以下(寒冷地は2.0以下)という、とんでもなく低いハードルだったので、意味をなしていたとは言えませんが。

『C値を測定する気密測定は、いつ実施するのがベスト?』に対して

ベストは、断熱施工後と完成後の2回ですが、以下理由により「断熱工事後のみ1回」で十分だと思います。

・断熱工事後より完成後の方が、気密性能は上がる(C値が下がる)ことが多い
断熱工事後にボードやクロスなどを施工していくので、気密性能は上がっていきます。エアコン設置などのマイナス要因もありますが、総じて気密性能は上がることが多いです。

・完成後だと手直しできない
断熱工事後の気密測定でC値が高ければ、断熱補強でC値を下げることができますが、完成後はほとんど手直しができません。

気密測定も費用がかかりますので、「断熱工事後のみ1回」の測定で十分と考えてもらってOKです。

<気密測定は、断熱工事後に1回で十分>
気密測定は断熱工事後に一回で十分

『エアコン設置工事で気密性能が下がるのでは?』に対して

その通りです。エアコン設置工事で気密性能は若干下がりますが、きっちり施工すれば大きな影響はありません。逆に、雑なエアコン取付工事をされると、気密性能が大きく下がり、せっかくの高気密高断熱住宅が台無しです。

エアコンの施工の注意点は、配管内の隙間のパテ埋めや、スリーブ隙間やビスのコーキング処理を丁寧に行うことです。構造的にも、筋交いや柱を貫通させてしまう業者もあるので、できれば住宅会社から紹介してもらった施工会社に依頼することをおススメします。

<エアコン配管内の隙間パテ埋めの様子>
新築住宅へのエアコン設置時の気密性能確保は重要
(出展:THS

まとめ

ちょうどいい塩梅の「気密性能(C値)」は、以下の通りです。

C値 ⇒ 0.7以下

余裕があれば、さらに低いC値を目指してもらえればと思いますが、こだわりすぎに注意してください。

※ちょうどいい塩梅の「●●」とは・・・やりすぎずやらなさすぎず。建材のレベルは、ある一定まで上がるとそれ以降は費用対効果が悪くなるので、その手前(最も費用対効果が高いところ)で止めましょう、という“ちょうどいい塩梅主義”に基づいてセレクトされた推奨レベル。


【文責:瀬山彰】

プロデューサー紹介

master

日本の家づくり 強化ディレクター

瀬山 彰

筑波大学理工学群数学専攻卒(数理統計学士号)。硬式野球部に所属し、首都大学野球リーグの線形回帰分析を行う。中学高校の数学教員免許を取得。

筑波大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードを確立することを目標に掲げる。

2015年、「家づくり せやま学校」を開校。“日本の施主を強くする”を合言葉に、施主の知識向上を目的とした講演活動をスタートさせた。「展示場では絶対教えてくれない話が聞けた!」「こんな楽しい授業は初めて!」など、口コミでせやま学校の評判が広がり、各メディアからも注目が集まっている。

関西を中心に年間100件以上の講演をこなしながら、雑誌コラムの連載やFMラジオ局「FMOH!」にて冠番組のDJを務めるなど、活躍の場を広げている。

中学高校数学教員免許、宅地建物取引士、2級FP技能士。3人娘(双子4歳、2歳)。広島県出身、広島カープファン。

【メディア出演】
◾️FMOH!85.1 毎週火曜19:00〜
「瀬山彰 NEXT STANDARD LIFE」
◾️子育て情報誌 「まみたん」対談連載
「THE PROFESSIONAL」

Copyright