2024.03.14
C値(気密性能)の測定基準・推奨レベルとは?よくある質問にも回答!
当然ですが「快適な家」を目指すなら、断熱性能とあわせて「気密性能」もしっかり担保しなくてはいけません。
そこで今回はこの気密性能について、
- 気密性能を担保しないと、どうなってしまう?
- 具体的に、気密性能(C値)はどれくらいの水準を目指せばいいの?推奨レベルは?
について詳しく解説していきます。
本記事の内容は、YouTube動画でも分かりやすく解説していますので、こちらもご覧ください!
目次
「気密性能」が低いと生じる4つの問題
まずは「気密性能を担保しないと、どんな問題が生じるのか?」について、さらっとお話ししておきます。
①夏は暑く、冬は寒くなる
「気密性能が低い=隙間だらけの家」なわけですから、当然そこから空気が入りまくります。もちろん熱い空気も、冷たい空気も全部入ってきます。
そのため、いくら断熱性能にこだわったところで、気密性能が低いと、夏は暑く、冬は寒い家になってしまいます。
関連記事:『断熱性能(UA値)の推奨基準値は?断熱等級の適切な選び方も併せて解説!』
②内部結露によって、家の寿命が短くなる
家に隙間があると、特に冬場は隙間から空気が漏れ(漏気)、この漏気によって壁内が冷やされ壁内に結露(内部結露)が発生してしまいます。
そしてこの内部結露は「壁の中」なわけですから、濡れたまま放置されることで次第に木材が腐り、シロアリをおびき寄せて家の寿命を短くしてしまいます。
③雨漏りの原因にもつながる
当然「隙間が多い」ということは、空気だけでなく、水も入りやすくなります。
そのため気密性能が低いと、「雨漏りの原因」にもなり得るということも考えられます。
④「換気」が滞ってしまい健康被害にも…
当然ですが気密性能が低いと、その隙間から空気が出入りしてしまいます。
「これが換気になるのでは?」と思うかもしれませんが、逆に家に隙間があると、意図しない空気の出入りにより、換気システムが当初の計画通り機能しなくなってしまうんです。
そしてこれにより、換気が不十分な状態になると、空気は澱(よど)み、CO2濃度も上がり、ハウスダストは増え…、と健康被害にもつながりかねないわけです。
平成15年から換気システムの導入は「義務化」!
「換気システムってお金かかりそうだし、ナシでもいいんじゃない?」という方もいるかもしれませんが、平成15年以降、換気システムの導入は義務化されています。
「窓開けて換気すればいいじゃん」という意見もあると思いますが、義務化されるぐらいですから、軽視せず「換気は快適な住環境の実現に不可欠」と認識しておきましょう。
気密性能は「C値」を基準に判断を!
そもそも「C値」とは?
C値とは、「家の大きさに対して、どれくらいのスキマがあるのか?」を表す数値で、このC値が小ければ気密性能が高い、C値が大きいと気密性能が低いとなります。
例えば上画像であれば、延床面積138.77㎡に対して、隙間の面積(総相当隙間面積)が30㎠ですから、30㎠÷138.77㎡で「C値:0.2(小数点第二位以下切り捨て)」となるわけですね。
「C値に影響する要素」って何がある?
家の構造(鉄骨or木造)や窓などの仕様も影響しますが、一番は「職人さんの施工品質」ですね。
家のスキマは建付けなど施工品質次第ですから、気密性能(C値)を担保するためには「施工品質が重要」と覚えておきましょう。
C値を知るためには「気密測定」が必要!
「気密測定」とは?
当然ですが、「スキマがどのぐらいあるか?」なんて、実際に家が建たないとわかりません。
そのためC値は、断熱処理の完了後など、ある程度家が建ったタイミングで計測器具を持ち込んで測定を行います。こうしてようやくC値が出るわけですね。
最近では「高気密住宅」とPRする住宅会社も多いですが、そもそもC値は職人の施工品質に大きく依存するため、たとえカタログやモデルハウスのC値が優秀でも、皆さんの家が同じような水準になるわけではないんです。ですので営業マンから見聞きしたC値は参考程度にとどめ、必ず「自分の家」で気密測定を行うようにしてください。
また「気密測定を行って、C値が良くなかった場合どうすればいいのか?」についてですが、このような場合は「手直し」を行うことで気密性能の担保が可能です。詳しくは以下の記事でお話ししていますので、こちらも併せて参考にしてみてください。
関連記事:『”気密測定”はマスト!気密性(C値)の検査タイミングと数値が悪かった時の対処方法は?』
気密測定は「手抜き工事」の回避にも有効!
これは職人さん達が一番よく分かっていると思いますが、家のスキマを減らすためにはしっかり施工しないといけません。
そのため、「気密測定を行う現場」と「そうでない現場」とでは、現場の緊張感が全然違うんです。職人も人間ですからね。
だからこそ打ち合わせ時に、「しっかり気密測定してください」と伝えておくだけで、手抜き工事のリスクがグンと下げることにもつながるわけです。
気密測定って、何も言わなくてもやってもらえる?
気密測定って何も言わずともやってもらえそうですが、実際の実施率は「10棟のうち1棟も実施されていない」ほどです。
「高気密高断熱住宅!」といってPRしているのに、肝心な気密性能が数値として出さないのは、もはや詐欺ですよね。
そもそも住宅会社が責任を持って測定すべきですが、上記のような現状も踏まえ、必ず皆さんの方から「気密測定してください」と伝えるようにしてください。
関連記事:『”気密測定”はマスト!気密性(C値)の検査タイミングと数値が悪かった時の対処方法は?』
気密性能で「目指すべきC値の水準」は?
【結論】ちょうどいい塩梅の『気密性能(C値)』は?
ちょうどいい塩梅の「気密性能(C値)」は、以下の通りです。
ちょうどいい塩梅の気密性能(C値)は?
- C値 ⇒ 0.7以下
一般的には、C値1.0以下が「高気密住宅」とされていますので、それをもう少し下回る「C値:0.7〜0.5」を目指していただきたいと思います。
「C値=0.7以下(0.5以下を目指す)」を推奨する理由
C値は低ければ低いほど良いわけですが、当然さらに良くしようと思うと、その分コストもかかってしまいます。
C値=0.7以下であれば、気密性能も担保できますし、気密住宅(木造)の施工に慣れている会社であれば、付加断熱や気密テープなど追加費用になりがちな施工をせずとも現実的に達成できる水準なんです。(ただし、複雑な形状や3階建ての場合は、数値が悪くなる傾向があります)
「高気密住宅の水準(C値=1.0)」で十分じゃない?
なぜ「C値=1.0」ではなく「0.7以下」を目指すべきなのかというと、気密性能は経年劣化するからです。
特に窓サッシ回りは頻繁に開け閉めするので、少しずつ隙間ができたりします。しかし、やりすぎてもお金がかかってしまいます、「C値=0.2~0.1」とかを目指しても劇的に快適になるわけでもありません。なので目安としては、「C値=0.7以下(できれば0.5)」を目指していただければと思います。
気密性能(C値)に関するよくある質問
Q. C値って、ZEHなどの基準に入っていませんよね?
家の性能を示す基準には、「ZEH基準」をはじめ、「次世代省エネ基準」、「HEAT20基準」などさまざまありますが、実はこれら全てにおいて『C値』は必要項目に含まれていないんです。
実際、めちゃくちゃ重要なはずなのですが、この裏には「大手ハウスメーカーへの配慮」があるのでは?と思っています。つまり、「C値自体は大切なんだけど、大手ハウスメーカーは”気密性能の担保”が苦手なので、国が意図的に必要項目から除外しているのではないか?」ということですね。
その証拠に、平成11年の「省エネ基準」には『C値』が必要項目に含まれていたのですが、のちの平成25年基準では必要項目から削除される、という魔訶不思議な現象が起きました。「C値は重要じゃない!」と言う専門家はいないにもかかわらず、省エネ基準からは削除されるという…、この業界の”闇”の部分だと思います。
なんで大手ハウスメーカーはC値が苦手なの?
これは、大手ハウスメーカーが採用する「鉄骨住宅(鉄骨のプレハブ住宅)」では、気密性能が担保できないからです。
これは良い/悪いという話ではなく、そもそも鉄骨プレハブ住宅自体がそういうものなんです。
理由はいくつかありますが、最もわかりやすいのは「ボルトやビスを打てる箇所の自由度」。木造住宅は構造材が「木」なので、どこでもビスを打てますが、鉄骨住宅はビスを打てる箇所が限られてきます。この差が気密性能にも大きく影響してくるわけです。
ちなみにBE ENOUGHでは、「C値:0.7以下」を推奨していますが、鉄骨住宅の場合、「C値:2.0以上」になる場合がほとんどです。
このように、大手が採用する鉄骨住宅だと、どう頑張ってもいい数値が出せないので、国の基準に追加されるも必要項目から除外されることになったんだと思います。
Q. 気密性能を重視して考える際の「窓・サッシ」の選び方は?
これは下記記事でも説明していますが、気密性能で一番優れているのは「FIX窓(はめ殺し)」です。
もちろんこのFIX窓は断熱性能的にも優れているため、特に開けなくてもいい採光目的の窓であればFIX窓を使ってください。次点に来るのが、「滑り出し窓(縦滑り窓・横滑り窓)」ですね。これらは開閉できる窓の中では、断熱性能・気密性能ともに優れています。
「引き違い窓」や「掃き出し窓」については、昔よりだいぶ性能も良くなりましたが、それでも他の窓に比べると経年劣化でスキマができやすいので、必要最低限の場所でのみ導入するのが良いと思います。
関連記事:『【完全攻略】新築の「窓選び」最適解は?窓の種類/性能/配置など徹底解説!』
Q. 「気密コンセントボックス」はつけた方がいい?
(出典:日本住環境株式会社)
「気密コンセントボックス」とは、コンセント周りの気密性能を担保するためにつける上画像のようなカバー(ボックス)ですね。
これを付けることで気密性能や断熱性能が上がるとされているわけですが、結論「外壁に面しているコンセントには、気密ボックスをつけた方がいい」と思います。(部屋と部屋を分ける「内壁」に付けても何の意味もないので、その点は注意を)
「絶対に付けないとダメ!」というものでもないので、せやま基準にも入っていませんが、「付ける or 付けないで言うと、付けた方がいい」って感じですね。
Q. エアコン設置工事をすると気密性能が下がる?
<エアコン貫通部のパテ埋めの様子>
(出典:THS)
これはその通りです。
エアコンを設置する際、壁に外気を取り込むための穴を設けるため、その分若干ですが気密性能も下がります。が、きっちり施工すれば大きな影響はありません。
逆に取付工事がずさんだと、気密性能が大きく下がってしまうことにもつながりますので、設置依頼をするときには以下を注意しておきましょう。
- 貫通部のウレタン断熱処理+パテ埋めがされているか?
- 化粧カバー回りの防水処理がされているか?
また中には家の構造を把握しないまま工事を行い、筋交いや柱を貫通させてしまう業者もいるので、できれば住宅会社から紹介してもらった施工会社に依頼することをおすすめします。
まとめ
ちょうどいい塩梅の気密性能(C値)を目指す上で、抑えておくべきは以下の4点です。
ちょうどいい塩梅の「気密性能(C値)」のまとめ
- 快適な家を目指すなら、「気密性能」も担保を!
- 気密性能は「C値」で判断!(推奨水準は「C値=0.7以下」)
⇒C値は「職人の施工品質」に依存する(モデルハウス・カタログ値は参考にならない) - C値を知るためには、「現地での測定(気密測定)」が必要!
⇒【要注意】気密測定は言わないとやってもらえない可能性大! - 気密測定をすれば、「手抜き工事」も防げる!
性能で迷ったら「せやま基準一覧表」
BE ENOUGHでは、住宅会社選びのための補助ツールとして、「せやま性能基準」と「せやま標準仕様」の2つからなる「せやま基準一覧表」を無料配布しています。
「せやま性能基準」を使えば、上記で紹介したように各建材について、「完全に不足→少し不足→ちょうどいい塩梅→余裕があれば」と家づくりで抑えておくべき性能レベルを検討できます。
詳しい使い方に関しては、下記リンク先の記事をご覧ください
ダウンロードページ:『せやま基準一覧表|お役立ちツール|BE ENOUGH』
合わせて読みたい記事:『営業マンより「家の性能」に100倍詳しくなる方法|せやま性能基準』
解説動画(YouTube):『家づくりの超実践ツール「せやま基準一覧表」の使い方<総集編>』
PROFILE
せやま大学の人
瀬山 彰
大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて、全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードの確立を目標に掲げる。その後、中堅ハウスメーカー支店長を経て、2019年に独立。
「家なんかにお金をかけるな!質は担保しろ!」をテーマにした”ちょうどいい塩梅の家づくり”が話題となり、YouTube「家づくり せやま大学」は、登録者数5万人超えの人気チャンネルに。現在は、優良工務店認定制度「せやま印工務店プロジェクト」の全国展開を推進し、ちょうどいい塩梅の家づくりの普及に努めている。
娘4人の父親。広島県出身、広島カープファン。